この記事は、FRONTIAのMisa(ミサ)が書き上げた新作の怖い話です。背筋がひんやり冷たくなる怪談・怖い話や都市伝説をお届けしていますので、ぜひご覧ください。
怪談ストーリー
ある晩、いつものように仕事から帰宅したら、玄関のドアノブに何かがぶら下がっていた。
薄暗がりの中で目を凝らすと、それは小さなキーホルダーのついた銀色の合鍵だった。
見覚えがあった。
以前この部屋に引っ越してきた直後、なくしてしまった“あの合鍵”だった。
確か駅の近くで落としたはず。いくら探しても見つからなくて、結局、鍵を交換していた。
なのに、なぜいま突然ここにある?
気味が悪くなってあたりを見回す。でも人の気配はない。
恐る恐る鍵を取ってポケットにしまい、玄関を開けようとした。
……ドアは、鍵がかかっていなかった。
ぞっとした。確か今朝はちゃんと施錠して出かけたはずだ。
部屋の中に入ると照明をつけてすぐ、妙な違和感に気づいた。
部屋は整っている。散らかってもいないし、壊された様子もない。
ただ、、
机の上のペン立ての位置が微妙にずれていたり、冷蔵庫の中の飲みかけのペットボトルの向きが逆になっていたり。
ベッドの掛け布団も、自分が普段なら絶対にかけない方向でめくれていた。
まるで、誰かがこの部屋で静かに暮らしていたような、そんな違和感。
その夜は怖くて眠れなかった。
ずっとリビングの電気をつけっぱなしにして、布団の中でスマホを握りしめていた。
翌朝、ポストに一通の封筒が届いていた。差出人は書かれていない。
中に入っていたのは、たった一枚の写真。
……それは、昨夜の自分の寝顔だった。
布団をかぶりながらスマホを握って、横を向いて寝ている自分。
撮った覚えなんてもちろんない。
というか撮れるはずがない。僕は、ひとり暮らしなんだから。
写真の裏には、こう書かれていた。
「ただいま。」
後日談
警察に相談したが、被害届を出すには“証拠が足りない”と言われた。
怖くなってすぐ引っ越しを決めた。
新居に移って数週間、落ち着いてきた頃。
玄関のポストに、また手紙が届いていた。
封を開けると、そこにはこう書かれていた。
「合鍵、また作っておいたよ。」

ずっと中にいたかもしれないね



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