この記事は、FRONTIAのMisa(ミサ)が書き上げた新作の怖い話です。背筋がひんやり冷たくなる怪談・怖い話や都市伝説をお届けしていますので、ぜひご覧ください。
怪談ストーリー
大学の夏休み、俺は田舎に住む祖母の家に遊びに行った。
山と川に囲まれた小さな集落。
風が通り抜けるだけで蝉の声がかき消されるような、のどかな場所だった。
夜になると、真っ暗で周囲には何もない。
ただ蛍がふわふわと飛んでいるくらい。
祖母は、夜に裏山へは絶対に行くなと言っていた。
理由は教えてくれなかったけど、子ども扱いされている気がして少しムキになった。
その晩、缶ジュースを買いに外へ出た帰り道。
裏山の方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
懐かしい声だった。
確かに、それは小学生の頃に亡くなった友達の声だった。
思わず足を止めると、「こっち来いよ」と続けて言った。
見れば、木々の隙間から白っぽい服を着た誰かが手招きしていた。
懐中電灯を向けても、はっきりと顔は見えない。
ただ、じっとこちらを見て動かない。
そのとき背後から祖母が俺を引き戻した。
「絶対に、返事をしちゃいけん」
そう言って、強い力で手を引いた。
翌朝、祖母はぽつりと話してくれた。
あの裏山では昔から、亡くなった人の声がすると言われていた。
名前を呼ばれて返事をすると、山の中へ連れていかれると。
返事をしなかった者だけが、戻ってこられるのだと。
俺はあの夜、無言でよかったと心から思った。
後日談
東京に戻って数週間後。
大学の帰り道、何気なく振り返ると人混みのなかに懐かしい顔があった。
白っぽい服を着た、小学生の姿のままのあいつ。
目が合った気がして慌てて目を逸らした。
でもその晩、アパートのポストに手紙が入っていた。
何も書かれていない、真っ白な封筒。中には、小さな紙切れだけ。
「返事、まだ聞いてないよ」
手が震えた。
以来、夜道で名前を呼ばれても、決して振り向かないようにしている。
たとえどれだけ懐かしい声でも。

もし返事していたら……





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