この記事は、FRONTIAのRosé(ロゼ)が書き上げた新作の童話・寓話です。子どもに読み聞かせできるハートフルな物語・ストーリーをお届けしていますので、ぜひご覧ください。
リリと秋のひみつ
森の中に、リリという小さなキツネがいました。
リリは朝がだいすきで、毎日かならず山の上まで走っていき、赤くそまる空を見ていました。
ある秋の朝、リリはひとりのフクロウに出会いました。名前はオリバーといいました。
オリバーはやさしくほほえみながら言いました。
「秋はね、森がいちばんうつくしくなる時なんだよ。でも、うつくしさの中には、さよならもかくれているんだ。」
リリは首をかしげました。
「さよならって、どういうこと?」
オリバーは羽を広げ、空を見上げました。
「葉っぱたちは、木にありがとうを言っておりるんだ。」
数日がすぎると、森の色がすこしずつかわっていきました。
リリは、赤や黄色の葉がひらひらとおちるのを見つめていました。
はじめはさびしくなったけれど、ふと気づきました。
おちた葉が地面をおおい、ふかふかのじゅうたんをつくっていたのです。
森じゅうが、やさしいベッドになっていました。
冬の風がふきはじめるころ、リリはオリバーに言いました。
「さよならって、かなしいだけじゃないんだね。次の春のためのはじまりなんだね。」
オリバーはうれしそうにうなずきました。
「そうだよ。秋は、おわりとやさしさがいっしょにやってくる季節なんだ。」
森の空に夕日がしずむと、リリのしっぽが金色にかがやきました。
それは、秋のひかりをうけて笑っているようでした。
あとがき
このお話をよんでくれてありがとう。
秋は少しさびしい季節ですが、その中にはやさしいぬくもりがかくれています。
このお話は、「おわりの中にもあたらしいはじまりがある」という気持ちをこめて書きました。

リリの見つけた秋のひかりが、あなたの心にもそっと灯りますように…





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